【4 天皇の地位 (1) 明治憲法上の天皇の地位と日本国憲法上の天皇の地位には連続性がない】

 日本国憲法第1条

「天皇は、日本国の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。」

と定められている。

明治憲法下の神権天皇制は

(a) 日本版王権神授説に立ち、

(b) 天皇を神聖不可侵とした(第3条)

(c) 天皇は統治権の総覧者(第4条)

(d) 天皇は旧財閥をしのぐ膨大な皇室財産(私的財産) をもち、経済的な基盤としていた。


 日本国憲法における象徴天皇制は、

(ア) 天皇の地位を国民の総意に基づくものとする(第1条)

(イ) 昭和22年 天皇の人権宣言を行う

(ウ) 天皇から国政に関する一切の権能を排除し、(第4条) 

(エ) 皇室財産を国有化した(88条)


この両者を比較すると連続性がなく、明治憲法の神権天皇制が否定され、象徴天皇制が創設されたことを示している。 


   畑  博行  阪本昌成『憲法フォーラム』

   有信堂高文社,  1994,  41頁  42頁