【フオーラム5 外国人・法人の「人権」4 日本国憲法は、外国人にも基本的人権を保障する】

 「外国人」とは、法的には、無国籍者も含めてその国の国籍を保有しない「自然人」をいう。

[判例]

最高裁判所判例集

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56023


事件番号

 昭和25(オ)349


事件名

 人身保護請求


裁判年月日

 昭和25年12月28日


法廷名

 最高裁判所第二小法廷


裁判種別

 判決


結果

 棄却


判例集等巻・号・頁

 民集 第4巻12号683頁


原審裁判所名

 京都地方裁判所


原審事件番号


原審裁判年月日

 昭和25年10月5日


判示事項

 一 外国人登録令施行規則第一九条の執行者の署名捺印

二 被保釈者を行政権により拘束することの適否


裁判要旨

 一 外国人登録令施行規則第一九条(昭和二五年九月三〇日政令第二九五号による改正前のもの)に規定する執行者の署名捺印がなくても、これにより退去強制令書の執行の要件は違法とはならない。

二 保釈中退去強制令書により一時拘束したとしても、これをもつてただちに行政権による司法権の侵犯ということはできない。


参照法条

 外国人登録令(昭和25年9月30日政令295号による改正前のもの)16条,外国人登録令施行規則(昭和25年9月30日政令295号による改正前のもの)19条,刑訴法89条,刑訴法90条,憲法37条


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最高裁判所判例集2


https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53255

 


事件番号

 昭和50(行ツ)120


事件名

 在留期間更新不許可処分取消


裁判年月日

 昭和53年10月4日


法廷名

 最高裁判所大法廷


裁判種別

 判決


結果

 棄却


判例集等巻・号・頁

 民集 第32巻7号1223頁


原審裁判所名

 東京高等裁判所


原審事件番号

 昭和48(行コ)25


原審裁判年月日

 昭和50年9月25日


判示事項

 一 外国人のわが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利と憲法の保障の有無

二 出入国管理令二一条三項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断と法務大臣の裁量権

三 出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無についての判断と裁判所の審査の限界

四 わが国に在留する外国人と政治活動の自由に関する憲法の保障

五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障と在留の許否を決する国の裁量に対する拘束の有無

六 外国人の在留期間中の憲法の保障が及ばないとはいえない政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がないとした法務大臣の判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできないとされた事例


裁判要旨

 一 外国人は、憲法上、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていない。

二 出入国管理令二一条三項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断は「法務大臣の裁量に任されているものであり、上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新を不許可にすることが許されないものではない。

三 裁判所は、出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断についてそれが違法となるかどうかを審査するにあたつては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものとして違法であるとすることができる。

四 政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ。

五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではない。

六 上告人の本件活動は、外国人の在留期間中の政治活動として直ちに憲法の保障が及ばないものであるとはいえないが、そのなかにわが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれており、法務大臣が右活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできない。


参照法条

 憲法第3章,憲法19条,憲法21条,憲法22条1項,出入国管理令21条3項,行政事件訴訟法30条


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[学説] 

人権の前国家的性質や日本国憲法の国際協調主義→外国人に対する人権保障を肯定してきた。

  (文言基準説)→何人も→外国人にも適用

                            国民→日本国民だけに適用


[通説]

権利の性質によって外国人に適用されるものと、そうでないものを区別し、出きる限り憲法上の権利保障を及ぼすべきである。(権利性質説)


➡️基本的人権として外国人には何が認められないかを次に検討。


畑  博行  阪本昌成『憲法フォーラム』
有信堂高文社,  1994,  PP75-76