「行政調査権による出頭を強制されない権利」についてはWeb上で情報を見つけることができませんでした。
関連として「行政調査」というキーワードが入った論文がPDFで公開されていたので、それを読み、まとめました。
〔タイトル〕
「重要判例に学ぶ地方自治の知識」
行政調査と令状主義・不利益供述強要の禁止
https://drive.google.com/file/d/1T_5875DYYo6VsUo8MmMf7POePEIXq4iW/view?usp=drivesdk
第1 はじめに
地方公共団体では、いわゆる独自条例においてある行政目的を措定*し、その目的達成のために行政上の義務を課し、その義務の履行状況を把握するために立入調査を規定している例がしばしば見受けられる。
*【措定】
《名・ス他》
ある命題を、自明なものあるいは任意の仮定として、推理によらないで直接的に肯定し主張すること。
▷ ドイツ setzen の訳語。
[ 重要判例 ]
最高裁昭47.11.22判決 「川崎民商事件」
裁判要旨主義
一 当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が、憲法三五条一項による保障の枠外にあることにはならない。
二 所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六三条、七〇条一〇号に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといつて、憲法三五条の法意に反するものではない。
三 憲法三八条一項による保障は、純然たる刑事手続以外においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続にはひとしく及ぶものである。
四 所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六三条、七〇条一〇号、一二号に規定する質問、検査は、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な供述」の「強要」にあたらない。
第2 前提知識
1.令状主義
憲法 第35条 住居の不可侵 第31条 第32条
刑事訴訟法 第218条 令状による差押え・記録命令付差押え・捜索・検証
国税犯則取締法 臨検・捜索・差押え
2.不利益供述強要の禁止
憲法 第38条 自己に不利益な供述を強要されない。(2項以下省略) 1項は黙秘権を保障したもの。*
*捜査段階の被疑者であっても,裁判段階の被告人であっても黙秘権は認められています(憲法38条第1項,刑事訴訟法198条第2項,311条第1項)。
刑事訴訟法 第198条 被疑者の出頭要求・取調べ
第291条 (1・2項省略) 冒頭手続き
第311条 (2項以下省略) 被告人の黙秘権・供述拒否権・任意の供述
第3 最高裁昭和47年11月22日判決
1. 事案の概要
2. 争点
3. 判旨 (旧所得税法 70条 10号, 同法63条)
4. (1) 争点 ① について
ア 憲法35条と行政手続
第4 独自条例における立入調査・質問検査
●立川町環境美化の推進に関する条例
立入調査 第13条 ① ② ③
………… なお、任意調査であれば、行政指導同様に法律による行政の原理に照らし、法律の根拠は必ずしも必要でないが、同条例13条のように明文で定めることにより、調査権限の根拠を明らかにすることができ、正当業務行為(刑法35条) として住居侵入罪(刑法130条) の違法性を阻却する根拠を明らかにすることもできる。[1]
[1] 行政調査と令状主義・不利益供述強要の禁止
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畑 博行 阪本昌成『憲法フォーラム』有信堂高文社, 2007, P94