【フォーラム8 信教の自由と政教分離】

 ▓ 1 フォーラム8での課題 P119

スカーフ🧣続けた中学生に退学処分 仏(フランス🇫🇷)宗教シンボル禁止法

・イスラム教徒:スカーフ姿を続ける

・ターバンを脱ぐことを拒む

退学処分をめぐって生徒たちは学校当局を相手取って2004年10月19日、提訴に踏み切った。

〔朝日新聞2004年10月20日付夕刊より〕[1]


2 解題に向けて P120

(1)(2)(3)(4)に信教の自由についての疑問点が述べられている。

(1)信教の自由/心の中で/自己の信仰に基き

(2)公権力の宗教活動や財政援助の禁止は何故か

(3)国や地方公共団体の宗教への関わりは完全遮断されているか?

(4)国家の信教の自由への保障と国家の宗教的中立への保障は矛盾・対立?[1]


3 解題のための基本的情報 

     PP121-124

(1)宗教は個人の問題である

  ・参考図書の明示 

   J・ロック『寛容書簡』

(2)国教制度はなぜ存在したのか

  (ア)国が特定の宗教を特別な監督のもとに置く制度

  (イ)神権政治

      → 国教制度の基本的なニつの考え→政教分離は2つのうち後者を否定

(3)なぜ、国と宗教の関わり合いが禁止されるのか

(ア)「宗教」への国家の介入

(イ)統治への「宗教」の介入

を禁止するもの。

ヴォランタリズム(voluntarism)

セパラティズム(separatism)

という二つの思想から由来する。

(4)日本国憲法20条は、どんな歴史的背景をもって、想定されるに至ったか

第二次世界大戦後、連合国最高司令部が、人権指令および神道指令(昭和20年:1945年)を公表して、国家神道と結びついた神権的天皇制を明確に否定した。[1]


4 信教の自由 PP 124-128

(1) 信教の自由は少数者の権利として成立した

イギリスの「寛容令」(1689年)

アメリカのメリーランド(1649年)

ペンシルベニア(1682年)の「寛容令」に表れた。

宗教団体の活動の自由を保障していない憲法は、信教の自由を十分

保障したものとはいえない。

(2) 信教の自由は、内心での信仰から、宗教団体の結成まで、さまざまな自由を含む

①〜④までの4項目で具体的に解説されている。

(3) 信教の自由は、内面の信仰だけでなく外面的行為にも及ぶ [1]

〔判例〕

最判

昭38・5・15

判示事項

 一 加持祈祷の結果人を死亡させた行為と憲法第二〇条第一項

二 捜査の必要上、宗教的行事の外形を再現した検証調書と証拠能力の有無[2]

[2]引用サイト:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51738


〔信仰の自由の侵害〕

・「踏み絵」「宗門改め」[1]

(4) 信教の自由の侵害といえるためには「強制」または「不利益処遇」が必要である [1]

〔判例〕

福岡高等裁判所

昭55・5・30 

法律大好きのブログ(弁護士 村田英幸) 

国鉄駅舎内の神棚への黙とうに抗議してなされた行為が、傷害罪、公務執行妨害罪にあたるとされた例

https://ameblo.jp/2013hide/entry-12846333468.html


最高裁

昭63・6・1

自衛隊らによる合祀手続の取消等請求事件

判示事項

 一 私的団体が護国神社に対し殉職自衛隊員の合祀を申請する過程において自衛隊職員のした行為が憲法二〇条三項にいう宗教的活動に当たらないとされた事例

二 死去した配偶者の追慕、慰霊等に関して私人がした宗教上の行為によつて信仰生活の静謐が害された場合と法的利益の侵害の有無[3]

[3]引用サイト:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52169


東京地裁

昭61・3・20

行政事件判例集

日曜日授業欠席処分取消等請求事件

判示事項

 1 区立小学校長が児童の指導要録の出欠の記録に当該児童が欠席した旨記載することは,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか 

2 区立小学校長が,日曜日を授業日と指定していわゆる日曜参観授業を実施し,キリスト教の牧師及び副牧師の子で,教会学校に出席したために右授業に欠席した児童に対し,指導要録の出欠の記録に同日欠席した旨の記載をしたことは,憲法14条1項,20条1項,26条,教育基本法3条,7条,19条に違反せず,裁量権の逸脱もないから,不法行為に当たらないとした事例[4]

[4]引用サイト:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=35989


2024.07.22(月)


5 政教分離 PP 129-134

(1) 政教分離規定とは憲法のどの規定をいうのか

■ 憲法20条1項後段

「・・・いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」

■ 憲法89条

「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」に関することが論じられている。[1]

〔 判例 〕

津市地鎮祭事件に関する昭和52年7月13日の最高裁判決

事件名:行政処分取消等

破棄自判

判示事項

 一、憲法における政教分離原則

二、憲法二〇条三項にいう宗教的活動の意義

三、市が主催し神式に則り挙行された市体育館の起工式が憲法二〇条三項にいう宗教的な活動にあたらないされた事例[5]

[5]引用サイト:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54189

→ この最高裁の判断方法は「目的・効果基準」と、よばれる。[1]


憲法20条3項の禁止する「宗教的活動」の意義についての検討は節をあらためる。と著されている。[1]


■ 憲法20条3項

「③ 国及びその機関は、宗教教育その他のいかなる宗教的活動もしてはならない。」[1]


(2) 国の活動が「宗教的活動」に該当するのはいかなる場合か

リーディング・ケースとして、(1)でも著されていた津市地鎮祭事件(昭和52年7月13日の最高裁判決)が検討されている。裁判所の記述については(1)を参照。

この起工式の地鎮祭についてのそれが「宗教的活動」であるか否かの最高裁の基準を①〜⑦までに箇条書きにして具体的に記述。

最高裁が特にどの項目を強調したかも論じられている。まとめとして筆者の反論が著されている。

⑥の解説は長く判例が3つ例示されている。ひとつは上記の津市地鎮祭事件で、最高裁は、⑤と⑥を強調したと記されている。2つ目の判例は玉串料判決最大判平9・4・2)について詳しく分析されている。  

事件名:損害賠償代位

判決 結果 その他

判示事項

 一 県がD神社又はE神社の挙行した例大祭、みたま祭又は慰霊大祭に際し玉串料、献灯料又は供物料を県の公金から支出して奉納したことが憲法二〇条三項、八九条に違反するとされた事例

二 委任又は専決により県の補助職員らが公金支出を処理した場合において知事は指揮監督上の義務に違反したものであり過失があったが補助職員らは判断を誤ったけれども重大な過失があったということはできないとされた事例

三 複数の住民が提起する住民訴訟と類似必要的共同訴訟

四 複数の住民が共同訴訟人として提起した住民訴訟において共同訴訟人の一部の者がした上訴又は上訴の取下げの効力[6]

[6]引用サイト:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54777

3つ目が、4(4)で述べられていた

福岡高等裁判所

昭55・5・30 

法律大好きのブログ(弁護士 村田英幸) 

国鉄駅舎内の神棚への黙とうに抗議してなされた行為が、傷害罪、公務執行妨害罪にあたるとされた例

https://ameblo.jp/2013hide/entry-12846333468.html

である。 

⑦に関しては、神職・僧侶の慰霊祭に参列して玉串を忠魂碑に捧げる行為(箕面市慰霊祭事件)が「宗教的活動」に該当するか検討してみる。と著されている[1]。

(3) 「宗教団体」とは何か

「宗教団体」については、憲法89条と20条1項後段(5 政教分離 (1)→see)

3 (3)で政教分離がセパラティズムに由来すると書かれている。

そして、

箕面市忠魂碑慰霊祭訴訟への詳しい論述があり、(ア)(イ)(ウ)

に筆者の非宗教団体への公金支出についての考えが述べられています。コラム15では、

箕面忠魂碑訴訟最高裁判決

と、題された〔毎日新聞1993年2月16日付け〕の記事が載せられている。とても解りやすくまとめられた記事であった[1]。


本訴訟の裁判年月日の記入が見当たらないので、他の判例本から探してみる。因みに本書は判例の年度等がよく間違えて記されており、最高裁判所の裁判例検索で出てこないことが度々である。対処法としては、キーワードを並べてGoogleで検索をかけ、ヒットしたのもの(ja wikipedia等)に正しい裁判の年月日が記載されているので、その年月日を裁判年月日→期日指定で入力して検索をするとヒットする。

箕面忠魂碑事件として、大沢秀介『判例ライン 憲法』成文堂, 2007にあった。精神的自由の項目にまとめられていた。

最三判 平成5.2.16 民集47.3.1687

とありました。判例検索にかけてみる。検索でヒットしなかった。いくつかの事件はあったが、別の事件であった。

大沢秀介『判例ライン 憲法』成文堂, 2007, 74頁によると、

「・・・・・遺族会主催の忠魂碑前での神式・仏式の慰霊祭への公務員の参列は、目的効果基準により、政教分離原則(憲法20条)に反しない。」[7]と、あった。


2024.07.23(火)


6 政教分離と信教の自由の関係

PP 135-136

・生徒が宗教的シンボルを着用することは政教分離に反するという考え方

→ 生徒のこのような行為が政治に関係する?(浅田)

筆者 : 生徒の十字架のネックレスの着用を政教分離が要請する。

→ 逆に、生徒の信教の自由の侵害とならないか?

・我が国の個人の宗教への配慮

→ 拘置所に収監されている死刑囚などに対して教誨師(きょうかいし)を派遣する場合等

・義務教育の私立学校について

(本書からは解りにくいが、おそらく宗教的教育も課程にある私立学校のことであろう…)

高等学校段階での国、宗教についての筆者の考えが述べられている [1]。


2024.07.24(水)


7 今後の課題 PP 136-138

(1) ある行為が「宗教的」、それとも「習俗的」か、という判断方法は、どこまで説得的であるか

→ 憲法20条と照らし合わせて筆者の考えが述べられている。

(2) 最高裁判決のいう「目的・効果基準」をさらに明確にするためには、何が必要か

→ 公権力が宗教団体・宗教教義と直接かかわり合いをもつ場合への

筆者の考えが述べられている。

(3) 宗教法人の経営する学校に対する補助金の交付は、許されるだろうか

→ 筆者の考えは、結論からすると、憲法89条や憲法26条(教育を受ける権利)から鑑みて「許されない」としていて、別案が提示されている[1]。


2024.07.24(水)


〔参考文献〕

[1]畑 博行 阪本昌成『憲法フォーラム』有信堂高文社, 2007, PP 119-138

[7]大沢秀介『判例ライン 憲法』成文堂, 2007, 74頁