第二次世界大戦後、国際社会においてはさまざまな分野において国家間の協力が著しくなってきている。
国際法と国内法の関係についての体系
・国際法の受容に必要な措置
・国際法と国内法の優位関係
が変更を受ける。
一国の憲法事項と考えられてきた人権保障が国際法の重大なポイントとなってきている。
(1) 欧州共同体法は国家の主権の見方を変えるか
欧州共同体(European Community EC、欧州経済共同体EECがマーストリヒト条約により改称)、および欧州原子力共 同体(Euratom)からなる欧州共同体 (European Communities) (石炭鉄鋼共同体(ECSC〉は2002年消滅)の国際機構の設立条約ならびに内部機関である理事会および委員会が採択した規則、命令および決定について
この場合、国家から独立した国際機構の制定した法(共同体法)が、構成国の国内法直接通用されるのである。
その法が個人の具体的な権利義務を定める。
→この法は、個人、構成および共同体 を等しく拘束し、個人はその相互関係においてまた国籍国のみならず他の構成国との関係においても共同体の権利主体となる。
そればかりではなく、個人の法的保護は、共同体司法裁判所と加盟国国内裁判所の双方において確保されることになる。
たとえば、個人(自然人および企業)は、理事会または委員会による共同体立法の無効を求 めて提訴することができる (EC条約230条)。
また、損害賠償責任申立て訴訟を提訴することができる(EC条約 235、288条)。
右のような直接訴訟のほかに共同体条約の解釈にかかわる問題が構成国国内裁判所において提起された場合について
この裁判所はこの点に関する決定が自らの判決を下すために必要であると認めるときについて
共同体裁判所にこの問題に対する先決的判決を求め、その判決に従って自己の判決を下す (EC条約234条)。
この先決的判決の制度は、共同体法の直接適用性と相まって、個人の権利を保護するための有効な手段となっている。
共同体法は、共同体加盟国の全領域において、無条件かつ同一の効力で適用される。
加盟国は、共同体条約を締結したことによって、その範囲内で主権の一部を 移譲したと解されている。
共同体法と相容れない国内法の規定は、それが憲法であっても効力がない。
加盟国国内裁判所のなかには、これに強い抵抗を示した国もあった。
今日ではいずれの国内裁判所も共同体法の憲法を含む国内法に対する優位を概ね承認している。
畑 博行 阪本昌成『憲法フォーラム』有信堂高文社, 2007, PP261-277
内:PP274-275
国際社会と憲法
ーーーーーーーフォーラム15