(2) 人権の国際的保障も、人権保障のあり方を変えるか
・第二次世界大戦後、人権抑圧の防止と国際平和の維持とは不可分であると認識。
・人権の国際的保障が重要事項となった。
国連憲章は、人権および基本的自由尊重のための国際協力を強調し(1条、13条1項b、55条cなど)、そのた め加盟国も国連と協力することを誓約すると定める(55条c、56 条)。
1948年に国連総会が採択した世界人 権宣言について
世界人権宣言は決議であってそれ自体としては法的拘束力はないと考えられている。
国際人権規約は、社会権的基本権(社会権規約)と自由権的基本権とを原則(自由権規約)として区別し、別個の条約である。
社会権規約:
① 労働や社会保障に関する権利
② 生存権的権利
③ 教育権
などが認められている。
自由権規約:
① 生命・身体の自由、拷問・奴隷などの禁止
② 移動・居住の自由
③ 公正な裁判を受ける権利
④ 私生活の保護
⑤ 思想・良心・宗教の自由
⑥ 表現・集会・結社の自由などが保障されている。
世界人権宣言より具体的かつ詳細な規定となっている。
この二つの条約(社会権規約と自由権規約)は、人権の保障に関して異なる義務を各締約国に課している。
社会権規約は、規約上の 権利を漸進的に達成するため自国の利用可能な手段を最大限に用いて行動する義務を締約国に課す(2条1項)。 自由権規約は、必要な立法措置や救済措置をとることを含めて、領域内にいるすべての個人に対して 規約上の権利を尊重し確保することを締約国に義務づけている(2条)。
国際人権規約の実施措置も、二つの規約で異なる。
社会権規約:
締約国は報告義務を負う(16条)。
自由権規約の実施措置:
自由権規約人権委員会による
報告の検討(40条)
国家通報手続(41条)
及び人権侵害の犠牲者の通報にもとづく人権委員会の検討手続。
ただし、後の二つの手続には国家の受託宣言と選択議定書の批准(ひじゅん) * が必要。
(日本はいずれの手続にも同意していない。)
右のような人権保障条約のほかに、地域的な条約として
① 欧州人権条約
② 欧州社会憲章
③ 米州人権条約
④ アフリカ人権憲章
これらの条約も自由権と社会権の実施については区別を設けている。
社会権:漸進的達成を義務づけるにとどまる。
これらの条約は国際人権規約と同様に、
① 国家報告手続(ただし欧州人権条約には無し)
② 国家通報手続
③ 個人通報手続をその実施手段としている。
ただし、欧州人権条約においては、直接裁判所に訴えられる資格を有している。
→ 個人は締約国の人権条約違反について
以上のような一般的な人権条約の他にも個別的な人権条約がある。国連総会:
① ジェノサイド条約
② 人種差別撤廃条約
③ アパルトヘイト条約
④ 女子差別撤廃条約
⑤ 拷問等禁止条約
⑥ 児童の権利条約を採択している。
国際労働機関:
労働関係および社会保障関係の諸条約
ユネスコ:
教育差別撤廃条約などを採択
* 条約に対する国家の最終的な確認、確定的な同意(の手続き)。
畑 博行 阪本昌成『憲法フォーラム』有信堂高文社, 2007, PP261-277
内:PP275-277
国際社会と憲法
ーーーーーーーフォーラム15
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