📘 5-3-2-2 【必須項目53】民法第96条第3項, 民法第121条

第 5 章 法律行為 2025/4/25 分


第 3 節 意思表示 2


2   詐欺 


[民法]第121条
(取消しの効果)
第百二十一条 取り消された行為は、 
初めから無効であったものとみなす。
https://laws.e-gov.go.jp/law/
129AC0000000089#Mp-Pa_1-Ch_5-Se_4
作成日 4月25, 2025
作成者 宅建士 浅田美鈴

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取消し前 遡及効 無効 登記に公信力がない 対抗問題 有効


【必須項目53】

土地建物が A から B へ B から C へと 順次 売買された。 Cに売り渡される前に Aが A・B 間の売買契約を詐欺を理由として取消した場合であってもC が所有権移転の登記を受けていた時は、AはCに対してその土地建物の所有権を主張することができない。(S57-19)


答え  ◯ できない


詐欺による意思表示の取り消しが対抗できない善意の第三者(民法第96条第3項)とは取り消し前の第三者に限られる。(大判 S 17.9.30)

その理由としては 民法第96条第3項は取り消しの遡及効から第三者を保護する趣旨の規定であるから。本問のCは取り消し後に取引に入った 第三者であるから、判例によると民法96条第3項によって保護されない。

この事例の場合 取り消しがあると A・B 間の売買契約は遡及的に無効になるから (民法第121条)、B は 無権利者であるのでC は B から土地を結果的には取得できない。

だとしても、取り消し後の第三者に対して取り消し権者が常に取り消しの訴求的無効を主張できるとすると登記に公信力を認めない 我が国においては 取引の安全が害されることになる。

そこで 判例は取り消しの遡及法は法的な擬制であり、取消しまでは詐欺による契約も有効であるので、 取消しにより 取消し権者に所有権の復帰的な変動があったとして扱うことができるとしている。

(大判 S 17.9.30, 最判 S 32.6.7)

つまり、Bを起点とする二重譲渡があったのと同じことであるので対抗問題となり 登記の先後で優劣が決まる。

本問ではCが先に所有権移転の登記を受けているのでCが土地建物の所有権を取得する。


[類] 判例の本質に照らすと、Aは Bに欺罔されてA所有の土地建物を Bに売却した後に、このAB間の売買契約を詐欺を理由としてAは取り消した後に善意のCがBからこの土地建物を購入場合、Aは登記を済ませ所有権移転が完了していればその取り消しをCに対抗することができる。


[民法]

(詐欺又は強迫)

第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_1-Ch_5-Se_2


(取消しの効果)

第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。 

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_1-Ch_5-Se_4

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089


【画像の説明】

[民法]第121条

(取消しの効果)

第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_1-Ch_5-Se_4

作成日 4月25, 2025

作成者 宅建士 浅田美鈴

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ニュートン司法書士合格対策チーム 編著『NEWTON 合格保証 TLTソフト 司法書士テキスト 1 民法総則』NEWTON, 2008, PP140-141