📘 5-3-2-2 【民法第96条第3項の善意の第三者】

第 5 章 法律行為 2025/4/17 分


第 3 節 意思表示 2


2   詐欺


民法第96条第3項
作成日 2025年4月17日・14:20
作成者 法律 blogger 浅田美鈴



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遡及 詐欺 利害 無効 損害賠償 取消し前の第三者 


【民法第96条第3項の善意の第三者】


[民法] 第96条第3項 第121条


(詐欺又は強迫)

第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。


*第三者に対抗することができない。→ (無効を)主張することができない。


(取消しの効果)

第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089


〔判例〕

(大判S17.9.30)

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該当する裁判例がありませんでした。


意思表示が取消しにより遡及的に無効とみなされる(民法第121条)ことにより、権利の取得を逆転される第三者を保護する趣旨で規定された。従って、ここに言う「善意の第三者」とは、詐欺の事実を知らないで詐欺による意思表示によって取得された権利について新たに利害関係を取得したものであると解されている。(大判S17.9.30)


〔事例〕

1. AはBに騙されて土地をBに売った。

2. BはAが騙されたことに気づいて

売買契約を取り消される前に善意の第三者Cに当該土地を売った。

3.その後、Aが 騙されたことに気づいて 売買契約の取り消しをしても

4. Aは民法第96条第3項の善意の第三者Cに対して遡及的無効を主張できない。

5. AはCから土地を取り戻すことができない。Cは有効に土地を取得する。

6. AはBに損害賠償請求をするしかない。


☆ 取消し前の第三者の保護について所有権その他の物件についての登記等の対抗要件を備える必要がないとする 判例がある。

(最判 S 49.9.26)


〔判例〕

最高裁判所判例集


事件番号 昭和45(オ)344

事件名 所有権移転登記請求

裁判年月日 昭和49年9月26日

法廷名 最高裁判所第一小法廷

裁判種別 判決

結果 破棄自判

判例集等巻・号・頁 民集 第28巻6号1213頁


判示事項

民法九六条三項にいう第三者にあたる場合


裁判要旨

甲を欺罔してその農地を買い受けた乙が、農地法五条の許可を条件とする所有権移転仮登記を得たうえ、右売買契約上の権利を善意の丙に譲渡して右仮登記移転の附記登記をした場合には、丙は民法九六条三項にいう第三者にあたる。


参照法条 民法96条3項

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54177


【画像の説明】

Civil Code Article 96, Paragraph 3: The rescission of a manifestation of intention due to fraud under the provisions of the preceding two paragraphs cannot be asserted against a third party who is acting in good faith and without negligence.

民法第96条第3項

前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

作成日 2025年4月17日・14:20

作成者 法律 blogger 浅田美鈴


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ニュートン司法書士合格対策チーム 編著『NEWTON 合格保証 TLTソフト 司法書士テキスト 1 民法総則』NEWTON, 2008, P135