🏚️【住宅倒壊における考えられる家主の責任】杉並区の2025年10月2日に起こった倒壊事例より→考えられる 法的責任は 民法第709条, 民法第717条, 国家賠償法第1条

杉並区住宅倒壊事故と損害賠償請求の可能性


2025年10月2日、東京都杉並区で住宅が倒壊し、隣接するマンションに土砂やがれきが流れ込む事故が発生した。幸い住民に人的被害はなく、マンション住民も無事であったものの、複数の世帯が自主的にホテルなどに避難したと報じられている。区によれば、以前から当該住宅の擁壁について危険性を指摘し、補強工事を行うよう所有者に行政指導を行っていたという。所有者からは直前に「工事を請け負う業者が見つかった」との連絡があったが、工事開始前に倒壊が起きたことになる。


このような事案では、今後住民や近隣住民、場合によっては通行人から損害賠償請求が提起される可能性がある。以下、想定される法的構造と請求対象を整理する。


1. 請求の中心となる所有者の責任


まず一次的な責任を負うのは住宅および擁壁の所有者である。民法717条(工作物責任)は、土地の工作物に瑕疵があり、他人に損害を与えた場合、所有者または占有者が賠償責任を負うと定める。本件では、危険な擁壁を放置したことが「瑕疵」に当たり、所有者の過失責任は極めて大きい。仮に所有者が工事業者を探していたとしても、実際に補強が行われるまでの管理責任は免れない。よって、損害を被った住民や近隣住民から直接、損害賠償請求を受けるのは避けられないだろう。


2. 区の責任と国家賠償法


一方で、行政の責任追及の可能性もある。国家賠償法第1条は、公務員が職務上の違法行為により他人に損害を与えた場合、国または地方公共団体が賠償責任を負うと規定する。区は「以前から危険を指摘し行政指導をしていた」と説明しており、一定の対応は取っていたといえる。しかし、もし今後通行人や近隣住民に死傷者が出ていたなら、「区は危険性を認識しながら十分な措置を取らなかった」として違法性を問われる可能性がある。もっとも、現行法では居住中の住宅や擁壁について区が強制的に補強や解体を行う権限は限定的であり、空き家でない限り代執行は困難である。そのため、区の責任は補充的なものにとどまり、一次的には所有者に賠償責任が集中すると考えられる。


3. 想定される損害の範囲


今回、マンション住民に直接の建物被害はないとされるが、敷地内に土砂やがれきが流れ込み、生活が妨害された。考えられる損害は次の通りである。


1. 避難関連費用


ホテル・旅館への宿泊費


避難に伴う交通費や食費増加分


2. 財産的損害


敷地や共用部分に流れ込んだ土砂・がれきの撤去費用


家財や車両が破損した場合の修理費


3. 使用不能損害


駐車場や庭などが使用できなかった期間の損害



4. 精神的損害(慰謝料)


急な避難や生命の危険にさらされたことによる不安・恐怖


特に高齢者や子供を抱える世帯では慰謝料請求の余地が広がる


さらに、もし通行人や近隣住民に死傷者が出た場合には、葬儀費用、逸失利益、治療費、後遺障害慰謝料など、損害賠償の範囲は大幅に広がることになる。


4. 中の住民と第三者の区別


ここで重要なのは、住宅内部の住民と外部の第三者(通行人・近隣住民)の扱いの違いである。内部住民は危険性を認識していたと推測され、自己責任の要素が強い。したがって、国や区からの補償を求めるのは困難である。他方、外部の第三者は危険を予測することができず、生命・身体に被害を受けた場合には国家賠償法の保護対象となる。結果として、所有者と区が共同被告とされる訴訟構造が想定される。


5. 今後の法政策的課題


今回の事故では幸い死者は出なかったが、もし通行人や近隣住民に犠牲者が出れば、「行政指導止まりで良いのか」という問題提起がなされるだろう。現行の空き家対策特別措置法は居住中住宅を対象としていない。今後は「倒壊の恐れがある住宅や擁壁」について、居住の有無にかかわらず行政が強制的に補強・解体できる制度を検討すべきではないかという議論が高まる可能性がある。


まとめ


杉並区の住宅倒壊事故では、主たる責任は所有者にあるが、通行人や近隣住民に被害が及んだ場合には区の国家賠償責任が問題となる。請求され得る損害は避難費用や清掃費用から慰謝料に至るまで多岐にわたり、被害の程度によっては数百万円規模の訴訟も予想される。区の対応は現行法の範囲では適切と評価できるものの、人命が失われる事態が起これば、より強力な行政権限を与える法改正が求められる可能性がある。


〔ニュースソース〕

杉並区で住宅倒壊、マンションになだれ込み住民避難…以前から危険性を区が指摘

2025/10/02 17:02

https://www.yomiuri.co.jp/national/20251002-OYT1T50051/


文責: 市民ジャーナリスト浅田美鈴 (宅建士)

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[民 法]


第五章 不法行為

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。


https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_3-Ch_5

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089


[国家賠償法]


第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。


https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000125


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